「ほっ」と。キャンペーン

船出

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 帰国後も、この「ドイツ日記」に愛着があって、なんとなく続けてきましたが、そろそろ一区切りしていいんじゃないかな、という気に(ようやく)なりました。更新を怠っている今も、見てくれている方が毎日いらっしゃるので、なかなか思いきれないでいました。
 
 ちょっと前にも書きましたが、ブログを始めたおかげで得られたことは多く、一年のドイツ滞在での経験が、より豊かなものになったように思います。たくさんの方からコメントを頂き、私のつたないブログに、思わぬ広がりができたことも、本当に嬉しいことです。コメントを残さずに読んでくださっていた方々からも、帰国後に感想などを聞かせて頂き、嬉しいやら恥ずかしいやら。

 なにはともあれ、これまで読んでくださった皆さま、本当に本当にありがとうございます。

 なんていうと、まるでお別れの挨拶のようですが、ちゃっかりブログは続けてしまいます。続編は「子連れ犬連れ ムサシノ日記」です。工夫のないタイトルです。よろしかったら遊びにきて下さい。

 このブログは、しばらくこのままにしておこうと思ってます。それでは、また。
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# by jukali_k | 2006-10-19 20:33

お気に入り

 なんて気持ちの良い青い空。たまりにたまった洗濯物をガンガンやっつけて、息子と一緒に外に出る。

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 けれど息子、雨だろうが晴れだろうが、毎日いつでも長靴男。自分で脱ぎ履きできるのがいいらしい。保育園に行くと、同好の士がやっぱりいる。園の玄関には、カンカン照りでも、脱ぎ捨てた長靴がちらほら。それでも、毎日これ一本という筋金入りは息子だけ。彼は「ボクのブーツ」と言っている。

補足1:写真のサッカーボールは、おこちゃま用のふわふわボールだけど、「2006 Berlin」の文字が燦然と輝いていた。決勝戦みやげにドイツでもらったもの。「輝いていた」と過去形なのは、ハナがガジガジと噛んだり舐めたりしているうちに、文字が消えてしまったからなのでした。

補足2:息子の視線が若干ボールからそれているのは、足元に棒きれを見つけたから。棒も最近のお気に入り。

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# by jukali_k | 2006-10-08 01:56

余計なお世話

 クローゼットを改めて見てみると、黒とか紺とかグレーがほとんどで、あとは青とカーキ、茶色が少しってかんじ。かなり地味だけど、好きな色なんだから仕方ない。たまに思いきってピンクなんて買っちゃうと、結局しまいこんだままになる。それでも秘かに決めているのは、おばあさんになったら派手にいくぞってこと。今日も、シルバーグレーの髪を短めのおかっぱ風に真っすぐ切りそろえたオシャレなおばあさんが、目を引くエメラルドグリーンのセーターを着ていて、すごくかっこ良かった。ドイツでも、サーモンピンクのスーツを粋に着こなしてたり、明るい紫色のTシャツにジーンズだったり、私が目標にしたいようなおばあさんを何人も見かけた。
 彼女たちは、したいようにしている、好きでしているからかっこいい。当たり前だけど。

 先日、久しぶりにバスに乗った。ひっきりなしに流される車内アナウンスを、日本のバスってうるさいなあと思いつつ聞き流していたんだけど、作り込んだような女性の高い声がこう告げた時は、思わず耳を疑った。

「お年寄りの交通事故が増えております。お年寄りの方は、車からよく見えるよう、明るい色の目立つ服装を心がけてください。」

 バスの車内放送に、なんで着るものまで指示されなきゃいけないんだろう。アナウンスにこの文章を入れることを考えた人、何をイメージしてたのかな、と思う。ちょっと派手めな洋服を颯爽と着こなすおばあさん、おじいさん、ではないような気がする。赤いちゃんちゃんこでも着て歩いていれば、満足するんだろうか。なんともバカにした話だ。
 プンプン怒っている私など構わずに、アナウンスはなおも続く。

「雨の日は、傘の忘れ物が大変多くなっております。お降りの際は、手荷物を十分ご確認のうえ・・・」

 あーもうほんと、いちいち、うるさいなあ。
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# by jukali_k | 2006-10-05 01:41

ノホー

 久しぶりに大好きなカレー屋さんに行った。本当はカレー屋さんじゃなくてカフェらしいんだけど、カレーしか食べたことがない。で、隣りでは木の家具なんか売ってて、そっちが本当は主体らしいんだけど、お値段があまりにも素晴らしいので、繰り返すけどカレーを食べに来たことしかない。
 それはともかく、そこの店員さんの、さわやかで押し付けがましくない笑顔が、落ち着いた感じで好ましい。伸びた背筋は見ていて気持ちよく、サーブする身のこなしもやわらかい。
 だけど、どうも話し方が気にかかる。

「メニューのほう、お持ちしました。」
「ご注文のほう、お決まりでしょうか。」
「お皿のほう、おさげいたします。」
「お砂糖、ミルクのほう、お使いになりますか。」

 丁寧な言葉遣いを心がけているということは、分かるんだけど。

 数年前に知人から聞いた話。大学の授業中、学生が発言する際に、あまりにも「ワタシ的には・・・」「ボク的には・・・」と言うことに呆れた教授。それは正しい日本語ではない、授業中の発言なんだから、口語的な表現はやめなさい、と注意した。すると学生は次の発言でこう言ったそうだ。
「ワタクシ的には、こう思います。」

 ドイツ語も難しかったけど、日本語も難しいですね。
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# by jukali_k | 2006-10-02 00:46

もう少しだけ、同じテーマで

 バッグ泥棒が美人であったと書いた。けれど彼女について、前回までに書かなかったことがある。それは彼女がヒスパニック系だったということ。私から見た外見的特徴を表す言葉として、「美しい泥棒」と書いても、「ヒスパニック系と思われる泥棒」とは書かない。少なくとも、なんの注釈もなく、「美しい」という形容詞の横に並べて、さりげなく文中に滑り込ませることが出来ない。なぜか。

 当時わりと時間があって、たまに近所の大学の講義にもぐりこんでいたのだけれど、その1つに犯罪学の授業があった。常識を疑え、というスタンスが面白く、中でも、人種と犯罪とを結びつける世論(あるいは「研究」!)に対する批判が、印象に残っている。例えばアメリカには、「アフリカンアメリカン(いわゆる黒人)には犯罪者が多い」という考えが、今なお根強く残っている。ヒスパニック系に対する偏見も強い。けれど実際の犯罪を統計的に見れば、白人男性によるものが圧倒的に多い。そしてそれは、全人口に占める人種の比率と大差がない。ではなぜ世間にそのような偏見があるのか、という肝心な詳細を、もう十年も前のことで既に忘れてしまったのは、ちょっと情けない。確か、マスコミの報道も一因としてあげていたと思う。白人が被害を受けたマイノリティーによる犯罪と、その逆とでは、報道のされ方が違う、というような。ともかく、多民族社会における共生、ということを、日本の文脈で考えたことのなかった私に、この授業は刺激的だった。アメリカ社会の抱える問題の一側面を見たように思った。

 ところが、アメリカからの帰国後(だからそれも、かなり前のこと)、私は、まさに自分の家から数十メートルのところで、その同じ問題が、目を疑うような形に凝縮された、一枚のポスターを見つけた。
 「犯罪を許さない、私たちは見ているぞ」という警告の言葉。その下には、同様の警告文が、中国語、韓国語で書かれている。いかにも犯罪者という人相の悪い男を、善良そうな日本人市民がスクラムを組んで監視する絵、そして「外国人によるものと思われる犯罪が増えています」との説明・・・。
 なんなの、これ?
 私がアメリカの、あるいはドイツの町を歩いていたとする。一枚のポスターを見つける。善良そうな白人市民がスクラムを組む絵、そして日本語で「私たちは見ているぞ!」との警告文が書いてある。そんなことを想像するまでもなく、ポスターに対する嫌悪感で、私は気分が悪くなった。

 外国人犯罪は増えているか。さる知事は「三国人」などという恥知らずなことを平気な顔をして言うし、新聞テレビは、善良な市民の不安をあおるような報道を繰り返す。けれども、本当に、外国人犯罪は増えているのか。
 アムネスティーや、外国人に対する偏見をなくす活動を続ける団体や、それから多くの研究者も、統計や調査をもとに「否」と言っている。ここにあげるときりがないので、アムネスティーの「多文化共生キャンペーン」のページだけをとりあえず紹介しておく。

 以上が、「ヒスパニック系の」という言葉は軽々しく使えないな、と私が思った理由。ある特定の人種だとか外国人だとかが犯罪と結びつけられ、「だから○○は」などという根拠のない偏見を助長するような可能性がほんの少しでもあるならば、それを避けたい。

 けれどここまで書いて思い出したことがもう一つ。とある女性バイオリニストがインタビューで「美人バイオリニスト」と紹介されて、こう答えていた。「ことあるごとに、そう言われるのには強い違和感がある。もっと演奏自体を評価してほしいのに。」
 バッグ泥棒の彼女から「どうして私のスマートな手口のことを言わないで、美人泥棒とばかり言うのか」とクレームがきたら、さてどうしましょう。
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# by jukali_k | 2006-10-01 00:35

これまででたぶん一番長い一日、後日談

 まだあるんかい、いい加減にせい!と言われようとも、なんだか筆がのってきちゃった。不幸自慢って案外楽しい。
 
 長い一日が終わって、数週間が経ったある日、ケンブリッジの警察署から電話があった。容疑者確認のために署まで来ることはできないか、とのこと。確認ってなんなんだ?との不安はありつつ、これで一件落着になるなら、とまたもや家族そろってはりきって出かけることに。
 警察署につくと、刑事さんと思われる男性が、小さな部屋に通してくれた。
「初めての町で盗難にあって、もう二度と来たくないと思って当然なのに、遠くからわざわざありがとう。」
 人の良さそうな笑顔でそう言われたので、いえいえ実はそれだけでは済まず、と帰路でのパンク事件の詳細まで、ついつい説明してしまった。彼は黙って、私と夫に握手を求めた。
 さて容疑者確認である。刑事さんは、分厚いファイルを机の上にドンっと置いた。壁の小窓をのぞき込み、隣りの部屋にならぶ数名の人物の中から・・・などというドラマのシーンみたいなことじゃなくて、ホッとするような残念なような。
 ファイルの中には、1ページ4人、つまり見開き8人の、老若男女、人種も様々な人物の顔写真が入っていたように思う。
「この中にいる?」
最初の8名にはいない。1ページめくる。いない。また1ページめくる。
「あ、この人!間違いありません!」

 常習犯なんだそうだ。過去に逮捕歴もあるが、現行犯でないと捕まえることはできないので、今回の件ではこれ以上の進展はおそらくないだろう、と。それでも貴重な情報をありがとう、と言われた。

 アライグマと娘の寝顔を真っ先に思い出すのは、その一日を象徴するくらい強く印象に残っている、という意味であって、バッグ泥棒の美しい顔立ちを、私はきっと忘れることはないだろう。今もう一度ファイルを見せられても、間違いなく彼女を指差せる自信がある。ちょっと目尻の上がったアーモンドアイ、通った鼻筋、知的な雰囲気さえ漂う口元・・・。ひょっとして思い出を美化してる? まあいっか。それくらい、させてよ。
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# by jukali_k | 2006-09-27 00:26

これまででたぶん一番長い一日、その4

 マサチューセッツ州を東西に伸びる高速有料道路、ターンパイクをぶっ飛ばすと、ボストンから家までおよそ2時間半・・・と「その1」で書いたものの、もう十年も前のこと。記憶が定かではない。夫は「2時間もかかったっけ?」と言ってるし。けれど、ケンブリッジの町を出たのが7時過ぎだったはずで、その時に「10時までに帰れるかな」と思った記憶がぼんやりとある。
 帰路の車中、家族はみな疲労困憊。車中は口数も少なかったが、不慣れな上にごちゃごちゃした町中をどうにか抜けてターンパイクに乗っかると、ようやく少しホッとした。一刻も早く家に帰りたいと、夫はぐんぐんスピードをあげた。
 すると30分ばかり走った頃だっただろうか。突然、道路の真ん中に黒いかたまりが見えたと思うと、車が乗り上げ、グワッゴンと大きく奇妙な音をたてた。そのままゴンッゴゴッ、ゴンッゴゴッと上下左右に揺れながらどんどん速度が落ちていく。訳が分からないまま、夫は必死に道の端に車を寄せて、なんとか停車した。
「・・・今の、何?」
 暗がりでよく見えなかったが、大きさからすると狐か犬かなにかが倒れていたのかも。二度轢きしちゃったのか。とにかく降りてみると、後ろのタイヤがぺしゃんこ。見事にパンクしてる。そして、こういう状況でのお決まりだけど、スペアのタイヤは、ない。
 夏の終わりとはいえ、辺りは暗く、風も肌寒い。そんな中、何処だか場所も正確に分からない高速の途中で、立ち往生する私たち。まさに「泣きっ面に蜂」的状況なのだけれど、こうも滅多になさそうな不運な出来事が続くと、なにかこう、フツフツと可笑しさがこみあげてくる。
 幸い懐中電灯を持っていたので、通りかかる車に向けて、SOSのつもりで振ってみる。けれども猛スピードを緩める気配も見せず、何台も何台も、車はただ通り過ぎて行く。「どうしたら止まってくれるんだろ?」と、娘も一緒になって、メチャクチャに電灯を振り回してみたりした。そうして待つこと約1時間。ようやくターンパイクの巡回車が私たちを見つけてくれた。と思ったら、レッカー車を呼んでおくから、そのままそこで待て、と。そして「寒いー」とみんなで体をくっつけあって、さらに30分待っている間の、なんと長く感じられたことか。ようやくレッカー車が現れた。がたいのいい、寡黙な感じの運転手が私たちに尋ねた。
「ここから一番近い修理工場までか、それとも家までか。」
私たちは迷わず答えた。
「家まで。」
 レッカー車のやたらと広い前列に、私たち家族と寡黙な運転手の計4名が横並びに座った。パンクした私たちの車を引っ張って、後ろから来る全ての車に追い越されながら、レッカー車はゴトゴトと走り始めた。寡黙な運転手は車中でほとんど話さず、かわりに大音量でロックをかけていた。けれど娘が「うるさい・・・」と言うと音量を下げてくれた。途中一度だけ休憩し、確か運転手は何かを食べて、私たちは小銭をかき集めて飲み物を買った。
 レッカー車は、私たち家族とパンクした車とを、我が家の真ん前まで運んでくれた。書類を作成する必要があり、寡黙な運転手にはリビングまで来てもらった。そして、再びゴトゴトとレッカー車が帰って行ったとき、時刻は夜中の1時を既にまわっていた。
 長い長い一日は、こうして終わった。そして今、目を閉じて真っ先に思い浮かぶこの日の情景は、颯爽と歩く美人女泥棒でもなく、泣いてる娘を抱いたまま全速力で走ったことでもなく、寒さに震えながら待ちに待ったレッカー車の登場でもない。

 あと5分ほどで家に着くという時、真夜中の月明かりの下、レッカー車のすぐ前を、一匹のアライグマが駆け抜けていった。道の右側の牧場から、左側の牧場にむけて。「あっ」と小さく声をあげて、夫と思わず顔を見合わせた。娘にも見せてあげたかったけれど、私にもたれかかって、既にぐっすりと眠りこんでいた。ようやく安心したのだろう。ほんわりとした優しい寝顔だった。
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# by jukali_k | 2006-09-26 00:24

これまででたぶん一番長い一日、その3

 怒りと興奮が少しずつおさまってくると、盗難にあったんだという現実が重く重くのしかかってくる。早く夫に会わないと、もうカフェに来ているかも。考えながら足を速める。すると、にわか捜索隊の中でも一番親切だったおじさんが向こうからやってくる。引き止めるひまもなく走り出した私を見て危険を感じ、まずは警察に通報し、それから慌てて追っかけて来たのだと言う。
 そうだった。夫にも報告しなきゃいけないけど、まずは警察。なんで思いつかなかったんだろう。親切かつ冷静なおじさんに感謝。
 もといたカフェで警察が来るのを待っていると、「おいおい、どこに行ってたんだよ」とようやく夫登場。待ち合わせに指定した建物内のカフェ(ここで私の勘違いが判明)にも、もしかしてと外に出てきても(そのときは一大捕物帳の真っ最中)私たちの姿が見当たらず、心配して探しまわっていたらしい。実は、と話し出すのとほぼ同時に警察官もやってきた。私は、その時まで一緒に残っていてくれた親切なおじさんと2人で、夫と警察官を相手に一部始終を説明した。犬に驚いた娘をなだめているスキに、横に立っていた若い女性がバッグを取っていったこと、その彼女を捜し出し、追いかけて行ったこと、けれど地下鉄の駅への階段まで行って恐くなって引き返して来たこと・・・。
「で、バッグの中身は?」と警察官。
「お財布には現金少々にカード数枚、タオルにハンカチに、それと・・・あ!!」
 それで思い出した。私はバッグにカメラを入れていた。黒いショルダー型のカメラケースに入ったまま。そう、気が動転していて分からなかったけど、あの若い男性が手に持っていた黒い小さなバッグは、私のカメラだったんだ。バッグ泥棒の女性は、財布とカメラをバッグから取り出し、バッグはどこかへ捨てて来たのだろう。私に見つかって、証拠となるカメラを道ばたに隠したに違いない。
 気がついた時は既に遅し。その男性はとっくの昔にどこかへ消えていた。まだまだ新しい私のカメラを手に持ったまま。大切にしていたカメラはもちろんだが、その日の昼に遊んだ海岸で、はじけるような娘の笑顔を沢山おさめたフィルムを、目と鼻の先で取り返せなかったことが、今もなお悔しい。
 それはともかく、今すぐカードを全て止めるようにとの警察の指示に、そうだそうだと慌てて公衆電話からあちこちに電話をかける。そうこうするうち、捨てられていたバッグが見つかった、と警察官がやってきた。もちろんカメラと財布はない。私も真っ先に確認したはずの女子トイレで発見したと言う。洗った手をふくペーパータオルを捨てるゴミ箱の、一番下に隠されていたのだ。手を拭いた様子のないペーパータオルがぐちゃぐちゃに突っ込まれていてピンときたのだとか。
 一応の事情説明を終え、被害届も出し、とりあえずその場ですることは全て終わった。ケンブリッジ滞在が予定外に長くなり、このぶんだと帰宅は夜遅くになるだろう。トボトボと駐車場へと向かい、車に乗り込んでからハッとする。夫は本屋で現金のほとんどを使い果たし、私はもちろんスッカラカン。長時間の駐車料金を支払ったら、帰りの高速料金も出せなくなってしまう。夫のクレジットカードでキャッシングしようにも、もう時間が遅くて近くのATMはどこも閉まっている。カードを止める前に現金を引き出せば良かったのだろうけど、そんなことまで頭が回らなかった。駐車場の出口で、さっき盗難にあったばかりで駐車料金が払えない、なんなら警察に電話して確認してくれ、と説明する。不審げな顔を隠そうともせず、早速電話をかける駐車場のおじさん。しかし事情が分かるとむしろ私たちに同情してくれ、気をつけて帰りなさい、と声をかけてくれた。

 確かに私たちは、気をつけて、細心の注意を払いつつ家路につくべきだった。私たちの長い一日は、まだまだ続く。
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# by jukali_k | 2006-09-25 00:19

これまででたぶん一番長い一日、その2

 真っ青になって立ったり座ったりしている私と、母親のただならぬ様子に泣き出してしまった娘。すぐに周囲の人達が「どうしたんですか」と口々に声をかけてくれた。
「私のバッグが、ここに、足元に置いていたのに・・・」
 答える私も泣けてくる。すると背後から「それは茶色いリュックじゃないか?」との声が。
「そうです!」と勢いよく振り返ると、声の主は、すぐ横のテーブルで1人でコーヒーを飲んでいた50代前半と思われる男性。
「それなら、テーブルの横にずーっと立っていた若い女性が、あんたが立ち上がったとき持って行ったよ。俺の前に手を伸ばすとき『ちょっとすみません』なんて言うし、てっきり忘れ物の自分のバッグを取りに来たのかと思って、彼女が取りやすいように椅子をずらしてやったんだ。」

 なんてことだ。その女性なら私もうっすら覚えている。人待ち顔でカフェの辺りに立っていたけれど、いいカモはいないかと物色していたに違いない。そんなことを話していたら、あちこちから「俺も見た」「僕も」と声が上がる。なぜか男性ばかりが数名。中には「いやー、すげー美人だったからずっと見てたんだ」なんて言ってる人もいる。まったくもう。

「で、その人、どっちに行きましたか?」と私。
「このビルの中だ。ついさっきだから、まだその辺にいるだろう。」と目撃者1。
「俺は顔もちゃんと覚えてるぞ、一緒に探すか?」と見とれていた目撃者2。
「よし、行くぞ。」と目撃者3。
 泣き続ける娘を抱きかかえ、3名の中年男性を伴って、こうしてバッグ泥棒大捜索が始まった。ドタバタとビル内を走り回る私たち。「絶対に女子トイレだ!」とおじさん1名が主張するのでトイレを真っ先にのぞいたけれども誰もいない。「2階には上がらないはずだ。裏側の出入り口から通り抜けたんだろう。」と別のおじさん。皆がうなずき、裏から抜け、ビルの周囲をぐるっとまわると・・・
「あ、いたぞ!」
 道の反対側を颯爽と歩く1人の女性がいる。スラリとした長身、ウェーブのかかった栗色の髪、ベージュの薄手のサマーセーターに細身のジーンズ、間違いない。他のおじさん達も「ああ、あいつだ」と頷いている。
 私は、なおも大声で泣いている娘を抱いたまま、「おい、ちょっと待て!」というおじさん達の言葉も聞かず、走って車道を突っ切って、泥棒女性の目の前に立ちふさがった。
「私のバッグはどこ?!」
けれどもすっとぼける彼女、なんのこと?とばかりに肩をすくめる。
「私のバッグ!茶色いリュック!」
大声をあげる私に、こともあろうか彼女は冷静にこう言った。
「Please calm down!(まあちょっと落ち着いて!)」
この一言で、私の中の何かがぶっちぎれた。クレジットカードに銀行カード、手持ちのお金全部が入ったバッグを盗まれて、しかもその盗んだ本人から「落ちつけ」だなんて!怒りのあまりに唇もふるえ、英語と日本語がゴチャゴチャになりつつ、気がつくと私は彼女の腕をつかんで絶叫していた。
「バカなこと言ってんじゃないわよ!目撃者が何人もいるんだから!返して!バッグを返して!今すぐ!!!」
 するとまた背後から、「バッグって黒いショルダーバッグ?」との声。振り返ると若い男性が、小さな黒いバッグを手に持っている。
「この女性が、あなた達がこっちを指差してなんか言ってるときに、道の脇の物陰に隠してたんだけど。」
 でも私のバッグは茶色いリュック。私はガックリと気落ちしながらも、そのバッグは私のじゃない、と答えた。
 すると彼女は、そのドサクサにまぎれて私の手を振り切るや、ダッシュで駆け出した。待ちなさいよー!となおも日本語で叫びつつ後を追う私。どんどん彼女は走り、もう追いつけないかと思ったとき、後ろ姿が地下鉄の駅に降りる階段で見えなくなった。あわてて私も地下鉄入り口に駆けつけると、階段の一番下に、なんと彼女がまだ立っている。すぐに私も降りて行こうとして、ハッとした。彼女は数名のいかにも人相の悪そうな男性と話している。そして下からこちらを見上げ、私の方を指差して・・・。

 私は初めて恐ろしくなった。後から人にこの話をすると、みんながみんな口を揃えて「どうしてそんな危険なことを!」と言う。考えてみれば、一番最初に泥棒女性に詰め寄ったとき、問答無用でいきなりズドン、という可能性だってゼロではないのだ。アメリカではポケットに現金50ドルを入れて持ち歩け、何かあったら差し出して逃げろ、深追いはもってのほか、腹いせに何をされるか分からないから、とも言われた。
 とにかく、身の安全のための50ドルなんていう考えに及ばなかった私も、さすがに背筋がゾゾーっとなった。今はこの場を早く立ち去らないと。しゃくりあげる娘をギューッと強く抱きしめて、私はカフェへと駆け足で戻って行った。

 この話、まだまだ続きます・・・。
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# by jukali_k | 2006-09-24 01:45

これまででたぶん一番長い一日、その1

 問題発生能力の有無についてはともかく、それで思い出したことがある。
 マサチューセッツ州のとある小さな町に、夫と、4才になったばかりの娘と3人で、2年ほど住んでいたときのこと。日付も正確に覚えているけれど、あれは1996年8月31日、家族でボストン近郊までドライブに出かけた。州の西のはずれにある町から、東の海岸よりのボストンまで、車をとばして2時間半。海岸で遊んで、ハーバード大学のあるケンブリッジで夕食、そして帰路につくという予定だった。
 ケンブリッジにつくと、大学町ならではの本屋の多さに目がくらんだ夫。ショッピングビルの前で「ちょっと1人で回ってくるから、この中のカフェで待ってて」と言い残し、小躍りするようにして去って行った。
 後から夫が言うには、のんびりした田舎町と比べ、ボストンは人も多く治安も心配だったから、「この中の」というのは、その建物の中にあるカフェのつもりだったらしい。けれど私は、ショッピングビルの一階の、道路に面したカフェの前に立って「カフェ」と言われたので、夫がいなくなるとすぐに、人で一杯のテラス席に娘と座った。
 シベリアンハスキーを連れた老夫婦が通りかかり、娘が「ワンワン!」と喜んだ。老夫婦は娘に気がついて、犬を見せてあげようとニコニコと近づいて来た。けれど間近で見ると思ったより大きいハスキーに驚いた娘は、椅子から立ち上がり泣き出してしまった。「あら、ごめんなさいね」と謝るおばあさんに、「いえいえ、大丈夫です」と私は自分の席を立ち娘を抱き上げて、老夫婦と二言三言話して、自分の席にもどり娘を膝に座らせ、去って行く老夫婦を見送った。その間およそ1分。ふと足元を見ると、バッグがない。慌ててテーブルの下、椅子の下、あちこち見回すけれど、どこにもバッグは見当たらない・・・

次回につづく 
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# by jukali_k | 2006-09-23 00:34

潜在能力

 「jukaliの家族ってほんと、問題解決能力があるよね!」
 ブログをずっと読んでくれている友人に言われた。ホメられた〜ホメられた〜と有頂天になって夫に報告。すると夫は、
「問題解決能力じゃなくて問題発生能力だろ。」

 そう言えなくもないかも。身近には様々な事情で単身赴任を選ぶ人もいるけれど、家族全員で、犬まで連れて、一年間のドイツ生活。色々なことがありました。ふー。
 でも問題が発生しなければ、解決するための能力も発揮できないわけだし、要は無事に帰国できたんだからいいんだ。いいんだってば。
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# by jukali_k | 2006-09-22 13:45

海ってなあに?

   「えーとね、大きなお風呂みたいなの」
   「水がいっぱいあってね」
   「砂も、砂場よりいっぱいあってね」
   「ザブーン、ザブーンって・・・」

   百聞は一見にしかず。息子にとって初めての海。



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# by jukali_k | 2006-09-17 01:04

September

今月のテーマ曲は、誰がなんと言おうと、Earth Wind & FireのSeptemberです。
大音響で一日一回。サビはもちろん、あわせて熱唱。
ジメジメしたこの気候をぶっ飛ばしたいだけなんですが。
まあ私が何を聞こうが、誰もなんとも言いませんよね?
だよね、せ#さん!
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# by jukali_k | 2006-09-15 23:29

ジャングル

一年ちょっと留守にして帰って来たら、庭がこんなことに。

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これでも東京在住。
向こうから、ホンモノの猿でも飛び出してきそう。

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家の中の掃除で手一杯。
とりあえず草だけ刈ったけど、あとはどうすりゃいいのよ。
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# by jukali_k | 2006-09-14 00:07

熱性けいれん、補足

 一昨日、息子発熱。幸い熱だけですんで、風邪の症状もなく、けいれんも起こさなかった。良かった。
 生まれた時からずっとお世話になっている、近所の小児科に行ってきた。熱性けいれんへの対応が、ドイツでは日本と違うこと、つまり予防のためにけいれん止めの薬を使わず、発熱時には解熱剤をまず使うということを話した。先生は、日本での基本的な考え方を詳しく説明してくれた。ここに一応書いておく。

 熱性けいれんは、高熱で起きるというよりも、熱の上がり始めに起こすことの方が多い。だからけいれんを起こす可能性のある子には解熱剤のみ使用することはない。解熱剤で一時的に熱が下がっても、薬の効果が切れたときに再び上がるかもしれず、その時にけいれんを起こすかもしれない。ならば熱は上がりっぱなしのほうが良い。それでも高熱が続いて子供がつらそうならば、まずけいれん止めの薬で予防をしておいて、その上で解熱剤を使って熱を下げてあげる。

 「考え方は色々だから、どうぞお母さん自身で判断してください」と言われた。確かに、急に熱が上がった時にけいれんを起こすことが多いかもしれない、と思う。一方で、必ずしも上がり始めに、というわけではなく、高熱が続いてからけいれん、ということも何度かあった。難しいところだ。

 そういえば、何かで読んだけれど、欧米の子供と比べて、日本人の子供は熱性けいれんを起こす率が高いのだそうだ。でもそれは、体質の問題というより、発見率の違いではないかという説もあるらしい。日本では子供と川の字になって同室で寝る家族が多いのに対して、欧米では幼いうちから部屋を与えて、子供は1人で寝かせるのが普通。だから数分で終わってしまう熱性けいれんに気がつかず、見逃しているケースが多いのでは、というのだ。
 実際のところは分からないけれど、ありうるかな、という感じもする。だから添い寝がいいんだという単純な話でもなく、これもまた難しいところだと思う。
 ちなみに、我が家の約四分の一はいまだに掃除が終わらず、ドイツから送った荷物も箱のまま積み上げた状態。現在私たち家族は、選択の余地なく、一カ所に集まって眠っている。
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# by jukali_k | 2006-09-12 23:41