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慌ただしい毎日の中で

 「ドイツはどうだった?」
 久しぶりに会う友人知人に聞かれると、陳腐な表現だけど「夢のようだった」とつい言ってしまう。確かに、夢のように素晴らしい、という意味が全くないわけではなく、実に楽しい一年間だった。でも、その「夢」のことじゃない。
 一年間のドイツ滞在を終えて、私たちは家に戻った。娘は制服を着て地元の公立中学校に通い、夫はまた忙しい仕事の日々が始まり、ハナは指定席であるL.L.Beanの犬用クッションでグーグー寝ている。ドイツに行く前とくらべて変わったことと言えば、息子が保育園に通い出したことと、私が一年の留守の間にカビだらけになった家の掃除に追われていることくらい。掃除が一段落したら、ぼちぼち私も以前の仕事にもどることになるだろう。
 ドイツ出発前と変わりない、日本での慌ただしい日常生活が、感慨にふけるヒマもなくスタートした。一年前にこの家を後にした夏の端っこをつまんできて、帰国後初日のところにくっつけてみる。記憶の中で、空白の期間などなかったように、するりと連続性ができてしまう。近所のスーパーに買い物に出れば、野菜の売り場も牛乳の売り場も、何も考えなくたって足が自然に向く。とても一年ぶりのこととは思えない。そりゃあ、たかだか一年で、何かがすっかり変わってしまうことなどない。
 だから、今の生活こそが私たちのリアリティーであって、ドイツでのことは夢だったんだ、などと感じてしまうのだろう。

 つくづくブログを書いていて良かったと思う。今になって読み返すと、その時々の確かな生活の実感がよみがえる。

 自分だけのための日記が、毎日の家族での食事だとしたら、ブログの文章は、親しい友人が遊びに来たとき、ちょっとだけ頑張ってつくるご馳走のようだ。日記を書くときよりも、一歩先まで考える。考えて文章にすることで、深まったり、気がついたり、アレとコレとがつながってくる。書き続けたからこそ、見えてきたことは多い。

 ドイツでの生活の中で見えてきた沢山のトピックを、引き続き考え続けること。振り返ると夢のようにも思える一年間の中から、今へとつながる「何か」を見いだすこと。そうすることで、帰国後の生活にも若干の変化があるかもしれない。忙しい毎日に埋没してしまいがちな自分を反省しつつ、そんなことを最近思っている。 
# by jukali_k | 2006-09-12 23:07

帰国前の騒動、その2

 子供の「熱性けいれん」という症状を、娘が一才半で起こしたその時まで知らなかった。幼い子供の脳は未熟で熱に弱い。急激な発熱に過剰に反応する。それが熱性けいれん。日本人の子供の5%前後が、6才までに一度は経験するらしい。
 何の知識もなく、けいれんを起こしている子供を目の前にしたら、「この子は死ぬかもしれない」と思う人が多いだろう。私もそうだった。突然、首をガクッとうなだれ、全身の力がグニャーっと抜け、呼んでも全く反応しなくなる。白目をむいて、口を半開きにし、よだれを流し、そのうち手足をビクッ、ビクッと小刻みに震わせる。もし、あの場に夫と、子供のけいれんについて知っていた友人夫婦がいなかったら、私はただ泣き、うろたえ、どうすることもできなかっただろう。
 もっとも、その時は永遠とも思えるけいれんの継続時間も、ほんの数分であることが多い。逆に、数分を超えるようなら危険な場合もある。けいれんについては調べまくって、今では私も「もし子供が熱性けいれんをおこしたら、まずは冷静に時間を計ることが大切」と知っている。他にも、子供は静かに寝かせること、服の首元、おなかをゆるめること、けいれんが左右対称かどうかを確認すること、意識が戻るまで無理に動かさないこと、など注意点はいくつかあるけれど、慌てずに経過を見る以外に特に必要な処置はない。身近で子供が熱性けいれんをおこした時には、まず落ち着いて、けいれんの様子をよく観察し、意識が戻るのを待つ。ぜひ覚えておいてください。

 この熱性けいれん。娘は一度だけだったけど、息子は既に6〜7回起こしている。ちなみに5%前後の子供が一度だけ経験し、その中の約3分の1の子供が何度も繰り返すのだそうだ。息子は、だから統計的には、百人に1〜2人ってとこか。心配ではあるけれど、こう繰り返されると親は慣れたものだ。慌てず騒がず、常備しているけいれん止めの座薬を使用し、経過を観察する。
 ところで、熱性けいれんに関する考え方が、日本とドイツでちょっと違う。けいれんを起こしやすい子供は、けいれん止めの薬を病院でもらう、というのは同じ。でも日本の病院では「熱が上がってきたら予防のためけいれん止めを使ってください」と言うのに対して、ドイツでは「けいれんを起こしたら、その途中でもいいので薬を使ってください」と言う。日本ではけいれんを起こすこと自体を嫌って未然に薬で防ごうとするけれど、ドイツでは予防のためではなく、けいれんが軽くなるように、けいれん後が楽になるように薬を使う。どうしてかは分からない。
 話が脱線してばかりだけれど、とにかくドイツ出発三日前の木曜の夜、熱を出した息子を、金曜に病院に連れて行く。半年間ほど週2〜3回のペースで通った病院も、実に数ヶ月ぶり。親しくなったアンドレオ先生に、息子は最後に挨拶したかったのかな、なんて思いながら診察を終え、受付も済ませ、帰ろうとしたその時、抱いていた息子の体がグニャっと半分に折れ曲がり、後ろに反り返った。「どうしたの?!」と声をかけても白目をむいて反応がない。
「熱性けいれんです!」
 大声をあげる私に、受付の女性が駆け寄って来て、ベッドに案内してくれる。次の子供を診察していたアンドレオ先生も走ってきて、素早く慣れた手つきで座薬を処方、落ち着いて経過を観察してくれる。
 けいれんが本当に熱性のものであれば、大きな心配は無い。問題なのは、けいれんが熱ではなく、他の原因だった場合。息子がけいれんを起こす度に、私は目を凝らして観察し、詳しく経過を説明して来た。いつも先生は「おそらく熱性けいれんでしょう」と言うものの、絶対大丈夫と断言はしない。それは、素人の口頭説明からの、判断の限界だったのだろう。それが上手い具合に、今回は病院の先生の目の前でのけいれん。アンドレオ先生も「これは間違いなく熱性けいれんです」と言い切ってくれたので、まあ良かったのかもしれない。
 と今になってみれば思うものの、病院でのけいれんが金曜で、出発が日曜。熱が下がらなければ、長時間のフライトをどうしよう、と不安でいっぱいだった。

 そして日曜。息子の熱、下がらず。
 機内には沢山の薬を持ち込んで、解熱剤と抗生物質を飲ませながらの帰国となった。手荷物チェックが尋常でないほど厳しいアメリカ行きの飛行機でなかったのが、せめてもの幸いと思うことにしよう。
# by jukali_k | 2006-08-29 01:08

帰国前の騒動、その1

 ブログのタイトルは「子連れ犬連れドイツ日記」。2人の子供たちと犬のハナが、大げさに言えば、約一年間のドイツ生活での「鍵」になると思ったから。渡独前、なにかと心配だったのは子供たちと犬のことだった。そして帰国後の今、あれこれと楽しく思い出すのは、やっぱり子供たちと犬にまつわることばかり。
 これが大人2人のヨーロッパなら、旅行三昧、コンサートに美術館、地元の居酒屋で夜通しビール飲んで・・・なんて無い物ねだりの妄想にふけったりもした。けれど、子供たちと犬がいたからこその、ブログには書ききれない貴重な経験をしてきたことは間違いない。

 とにかく。鍵はやっぱり、最後まで子供と犬だった。

 まずは帰国10日前。引越し準備で目が回りそうな中、娘が突然友達に呼び出された。お別れサプライズパーティーだという。段ボールに荷物を詰めるはしから、順々に引っ張り出してグチャグチャにしてしまう猿息子のお守り役がいなくなると、引越し作業は突然ストップしてしまう。親としては、もちろん友達の娘に対する気持ちが嬉しい。嬉しいんだけど、パーティー以外にも、泊まりがけで遊びに来いとか、映画に行こうとか、娘はちょくちょく連れ出された。さらには帰国前日の、まさにスーツケースと格闘中のその時にも、最後にちょっと挨拶したいと我が家に来た友達と、玄関先で話し込む娘。状況を分かってんのか、と言いたくもなったけれど、思春期真っ盛りの14才、仕方ないか。

 そして帰国の1週間前。ドイツ行きの道中では、ハナのケージで大失敗してしまったので、今回は余裕のLサイズをネット注文しておいた。邪魔なので地下に置きっぱなしだった小型冷蔵庫くらいの大きな段ボール箱を開け、いざ組み立てようとすると、どうも上手くいかない。それもそのはず、箱の中身は、上下2つに分かれたケージの、下の部分だけが2つ。屋根になる部分がないのだ。慌てて購入店に電話。念のため、ケージの床部分が2つならんだマヌケな写真をメールに貼付して送付。とにかく1週間後に使うので至急なんとかしてくれ、と強く要求。さすがに向こうも慌てて、早速その日のうちに必要な屋根部分を発送するので、明後日には着きますとのこと。それなら間に合う、と胸を撫で下ろす。
 帰国5日前。屋根部分の到着。これでハナも飛行機に乗れるね、とホッとしたのも束の間、組み立てようとしても、またまた上手く行かない。屋根と床の大きさが違う。実は、最初に送られて来た2つの床部分は、注文したLサイズではなく、Mサイズだったことが、なんとこの時点で発覚。Mサイズの床部分2つと、Lサイズの屋根部分1つを目の前に、呆然とする私たち。気を取り直して、購入店に即行で電話。
「注文したケージと違うのが来たんですけど!」
「お客様番号をお願いします。」
「000000です!!」
「そちらには、既に正しい商品をお送りしております。」
「だから、それもまた違ってたんです!!!」
「また床が来ましたか?」
「そうじゃなくて、最初の床のサイズがLのはずなのにMで、今日届いたLの屋根と合わないんです!!!!」
 ・・・と状況説明もややこしい。とにかく手元にある2つの床と1つの屋根すべてを返品し、向こうからは正しいLサイズの上下1セットを送ってもらう、ということに落ち着いた。のはいいけれど、私たちがきちんとケージを手にしたのは、結局帰国の3日前。その間、組み立てたり分解したり、必死のドイツ語クレーム電話をかけたり(これが疲れる、本当に)、デカイ荷物を返品のために郵便局まで持って行ったり、費やした労力と気力は計り知れない。

 そしてそのケージを手にした帰国3日前の夜。秋冬の病院通いがウソのように、4月以来すっかり健康だった息子が、突然高熱を出した。それについては、また次回。
# by jukali_k | 2006-08-28 01:24

昨日、帰国しました。

 とういうわけで、子連れ犬連れドイツ日記は、これにて終了。今まで読んでくださった方々、ありがとうございました・・・
 なーんて、今、終わってしまうのは、とっても心残り。引越しのドタバタのため、時間がなくて書けなかったネタがいくつかあるのです。日本からの「ドイツ日記」では、タイトルに偽りありなのですが、しばらくは帰国前後の一騒動についてなど、ボチボチ書いていくつもりです。もうしばらくお付き合い頂ければ嬉しいです。
 でも、やっとこさ帰って来たら、こちらでもやることが目白押し。引越しって何度やっても段取りが上手くなりません。
 今日はとりあえず、無事到着のご報告まで。
# by jukali_k | 2006-08-22 23:21

大掃除

 いつも大掃除の度に、大きな袋いっぱいになったゴミを見て、同じことを思う。
 これをもう一回家の中に全部戻せって言われても相当むずかしいのに、一体どこに隠れてたんだろう。
# by jukali_k | 2006-08-19 08:40