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船出

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 帰国後も、この「ドイツ日記」に愛着があって、なんとなく続けてきましたが、そろそろ一区切りしていいんじゃないかな、という気に(ようやく)なりました。更新を怠っている今も、見てくれている方が毎日いらっしゃるので、なかなか思いきれないでいました。
 
 ちょっと前にも書きましたが、ブログを始めたおかげで得られたことは多く、一年のドイツ滞在での経験が、より豊かなものになったように思います。たくさんの方からコメントを頂き、私のつたないブログに、思わぬ広がりができたことも、本当に嬉しいことです。コメントを残さずに読んでくださっていた方々からも、帰国後に感想などを聞かせて頂き、嬉しいやら恥ずかしいやら。

 なにはともあれ、これまで読んでくださった皆さま、本当に本当にありがとうございます。

 なんていうと、まるでお別れの挨拶のようですが、ちゃっかりブログは続けてしまいます。続編は「子連れ犬連れ ムサシノ日記」です。工夫のないタイトルです。よろしかったら遊びにきて下さい。

 このブログは、しばらくこのままにしておこうと思ってます。それでは、また。
# by jukali_k | 2006-10-19 20:33

お気に入り

 なんて気持ちの良い青い空。たまりにたまった洗濯物をガンガンやっつけて、息子と一緒に外に出る。

お気に入り_e0021542_141474.jpg


 けれど息子、雨だろうが晴れだろうが、毎日いつでも長靴男。自分で脱ぎ履きできるのがいいらしい。保育園に行くと、同好の士がやっぱりいる。園の玄関には、カンカン照りでも、脱ぎ捨てた長靴がちらほら。それでも、毎日これ一本という筋金入りは息子だけ。彼は「ボクのブーツ」と言っている。

補足1:写真のサッカーボールは、おこちゃま用のふわふわボールだけど、「2006 Berlin」の文字が燦然と輝いていた。決勝戦みやげにドイツでもらったもの。「輝いていた」と過去形なのは、ハナがガジガジと噛んだり舐めたりしているうちに、文字が消えてしまったからなのでした。

補足2:息子の視線が若干ボールからそれているのは、足元に棒きれを見つけたから。棒も最近のお気に入り。

# by jukali_k | 2006-10-08 01:56

余計なお世話

 クローゼットを改めて見てみると、黒とか紺とかグレーがほとんどで、あとは青とカーキ、茶色が少しってかんじ。かなり地味だけど、好きな色なんだから仕方ない。たまに思いきってピンクなんて買っちゃうと、結局しまいこんだままになる。それでも秘かに決めているのは、おばあさんになったら派手にいくぞってこと。今日も、シルバーグレーの髪を短めのおかっぱ風に真っすぐ切りそろえたオシャレなおばあさんが、目を引くエメラルドグリーンのセーターを着ていて、すごくかっこ良かった。ドイツでも、サーモンピンクのスーツを粋に着こなしてたり、明るい紫色のTシャツにジーンズだったり、私が目標にしたいようなおばあさんを何人も見かけた。
 彼女たちは、したいようにしている、好きでしているからかっこいい。当たり前だけど。

 先日、久しぶりにバスに乗った。ひっきりなしに流される車内アナウンスを、日本のバスってうるさいなあと思いつつ聞き流していたんだけど、作り込んだような女性の高い声がこう告げた時は、思わず耳を疑った。

「お年寄りの交通事故が増えております。お年寄りの方は、車からよく見えるよう、明るい色の目立つ服装を心がけてください。」

 バスの車内放送に、なんで着るものまで指示されなきゃいけないんだろう。アナウンスにこの文章を入れることを考えた人、何をイメージしてたのかな、と思う。ちょっと派手めな洋服を颯爽と着こなすおばあさん、おじいさん、ではないような気がする。赤いちゃんちゃんこでも着て歩いていれば、満足するんだろうか。なんともバカにした話だ。
 プンプン怒っている私など構わずに、アナウンスはなおも続く。

「雨の日は、傘の忘れ物が大変多くなっております。お降りの際は、手荷物を十分ご確認のうえ・・・」

 あーもうほんと、いちいち、うるさいなあ。
# by jukali_k | 2006-10-05 01:41

ノホー

 久しぶりに大好きなカレー屋さんに行った。本当はカレー屋さんじゃなくてカフェらしいんだけど、カレーしか食べたことがない。で、隣りでは木の家具なんか売ってて、そっちが本当は主体らしいんだけど、お値段があまりにも素晴らしいので、繰り返すけどカレーを食べに来たことしかない。
 それはともかく、そこの店員さんの、さわやかで押し付けがましくない笑顔が、落ち着いた感じで好ましい。伸びた背筋は見ていて気持ちよく、サーブする身のこなしもやわらかい。
 だけど、どうも話し方が気にかかる。

「メニューのほう、お持ちしました。」
「ご注文のほう、お決まりでしょうか。」
「お皿のほう、おさげいたします。」
「お砂糖、ミルクのほう、お使いになりますか。」

 丁寧な言葉遣いを心がけているということは、分かるんだけど。

 数年前に知人から聞いた話。大学の授業中、学生が発言する際に、あまりにも「ワタシ的には・・・」「ボク的には・・・」と言うことに呆れた教授。それは正しい日本語ではない、授業中の発言なんだから、口語的な表現はやめなさい、と注意した。すると学生は次の発言でこう言ったそうだ。
「ワタクシ的には、こう思います。」

 ドイツ語も難しかったけど、日本語も難しいですね。
# by jukali_k | 2006-10-02 00:46

もう少しだけ、同じテーマで

 バッグ泥棒が美人であったと書いた。けれど彼女について、前回までに書かなかったことがある。それは彼女がヒスパニック系だったということ。私から見た外見的特徴を表す言葉として、「美しい泥棒」と書いても、「ヒスパニック系と思われる泥棒」とは書かない。少なくとも、なんの注釈もなく、「美しい」という形容詞の横に並べて、さりげなく文中に滑り込ませることが出来ない。なぜか。

 当時わりと時間があって、たまに近所の大学の講義にもぐりこんでいたのだけれど、その1つに犯罪学の授業があった。常識を疑え、というスタンスが面白く、中でも、人種と犯罪とを結びつける世論(あるいは「研究」!)に対する批判が、印象に残っている。例えばアメリカには、「アフリカンアメリカン(いわゆる黒人)には犯罪者が多い」という考えが、今なお根強く残っている。ヒスパニック系に対する偏見も強い。けれど実際の犯罪を統計的に見れば、白人男性によるものが圧倒的に多い。そしてそれは、全人口に占める人種の比率と大差がない。ではなぜ世間にそのような偏見があるのか、という肝心な詳細を、もう十年も前のことで既に忘れてしまったのは、ちょっと情けない。確か、マスコミの報道も一因としてあげていたと思う。白人が被害を受けたマイノリティーによる犯罪と、その逆とでは、報道のされ方が違う、というような。ともかく、多民族社会における共生、ということを、日本の文脈で考えたことのなかった私に、この授業は刺激的だった。アメリカ社会の抱える問題の一側面を見たように思った。

 ところが、アメリカからの帰国後(だからそれも、かなり前のこと)、私は、まさに自分の家から数十メートルのところで、その同じ問題が、目を疑うような形に凝縮された、一枚のポスターを見つけた。
 「犯罪を許さない、私たちは見ているぞ」という警告の言葉。その下には、同様の警告文が、中国語、韓国語で書かれている。いかにも犯罪者という人相の悪い男を、善良そうな日本人市民がスクラムを組んで監視する絵、そして「外国人によるものと思われる犯罪が増えています」との説明・・・。
 なんなの、これ?
 私がアメリカの、あるいはドイツの町を歩いていたとする。一枚のポスターを見つける。善良そうな白人市民がスクラムを組む絵、そして日本語で「私たちは見ているぞ!」との警告文が書いてある。そんなことを想像するまでもなく、ポスターに対する嫌悪感で、私は気分が悪くなった。

 外国人犯罪は増えているか。さる知事は「三国人」などという恥知らずなことを平気な顔をして言うし、新聞テレビは、善良な市民の不安をあおるような報道を繰り返す。けれども、本当に、外国人犯罪は増えているのか。
 アムネスティーや、外国人に対する偏見をなくす活動を続ける団体や、それから多くの研究者も、統計や調査をもとに「否」と言っている。ここにあげるときりがないので、アムネスティーの「多文化共生キャンペーン」のページだけをとりあえず紹介しておく。

 以上が、「ヒスパニック系の」という言葉は軽々しく使えないな、と私が思った理由。ある特定の人種だとか外国人だとかが犯罪と結びつけられ、「だから○○は」などという根拠のない偏見を助長するような可能性がほんの少しでもあるならば、それを避けたい。

 けれどここまで書いて思い出したことがもう一つ。とある女性バイオリニストがインタビューで「美人バイオリニスト」と紹介されて、こう答えていた。「ことあるごとに、そう言われるのには強い違和感がある。もっと演奏自体を評価してほしいのに。」
 バッグ泥棒の彼女から「どうして私のスマートな手口のことを言わないで、美人泥棒とばかり言うのか」とクレームがきたら、さてどうしましょう。
# by jukali_k | 2006-10-01 00:35